新宿のガード下にはいろんなものが転がっている。中身を抜かれた財布や女、血まみれのヤクザ、どこぞの王子が投げた時計のダイヤ、ギターを爪弾く青年は悲哀を歌った。
「ある晩、飛び立つ恋わずらい。ある晩、飛び立つ恋はつらい。なごり花咲く、あなたは来ない」
駆け込み寺の番人は足かせのない死を憂う。
「一番街で若い命が飛び降りた。ホストに嵌まってツケが溜まり、雑居ビルの屋上でヒールを脱いだ。通行人が巻き添えを食い、取りはぐれたホストは、ちっ。死屍に舌打ちくれたとさ」
往来を見下ろす巨大モニターは幼児誘拐のニュースを告げ、巷では「臓器売買」が囁かれた。歓楽街の王とガード下のキング、黒人マフィアと地回りのヤクザ、おもわくと思いやりが絡んで生んだクリスマスの奇跡
EPHEMERAL KING AND SPRING FAIRY
エフェメラル 王と春の妖精
八坂堂蓮